未完放流

終わりなど無い、有るのは試練だけだ……

今更ながら氷河期世代の資産形成について

2022 年現在 30代後半から40 代中盤以下(超就職氷河期世代)が、 20代にやらずに後悔していること1位が「投資」らしい。 「資格取得」や「勉強」などの自己研鑽より上位になり、「努力しても無駄」と暗に言っているようで歪な社会になったものだと思います。

S&P500 の 2017~2021年のチャート
S&P500 の 2017~2021年のチャート *1

2017~2021年の S&P500 などは約2倍の値上がりしているので、素人ながらバブルを疑いたくなります。 やや語弊のある表現になりますが、後悔ではなく「靴磨きの少年が株価を気にしている」心理にも近い気がします。

私自身は超氷河期世代で、働き始めるのも遅く、年齢平均ほど稼いだことは無いようです。 皆にはどれくらい追いつけたかなと思いつつ、金融資産残高の分布(2019年度の家計構造調査)を眺めていました。 ザックリ推定を行ったところ、同世代中央値が2019年で世帯400万位ではないかと思われました。 率直な感想として少ない。 金とかダイヤモンドを現物で持っているのだろうか……?

就職氷河期世代の当事者として資産形成について考察してみました。

注意:本記事には投資に関するお得な技術・情報など一切書かれておりません。 尚、投資に絡んだ記事を書く時のお約束ですが「投資は自己責任」です。 本記事を参考にし、投資等を行い損失等が出ても筆者は如何なる責任も負いません。

金融資産残高:みんないくらもっているの?

総務省統計局の家計構造調査は執筆時点で2019年度版が最新です。

ガベージニュースさんで集計方法の変遷などが説明されています。 www.garbagenews.net

平均の金融資産があれば上位30.8%以内となり、格差が進んでいることが分かります。 内訳は預貯金が圧倒的に多く、投資は少数派になります。

中央値は非保持者(いわゆる0円世帯)を含めないという変な集計法です。 分布全体から求めた方が現実に近いのではないかと思いますが何か意図があるのかと勘繰りたくなります。

全世代 40代
平均 1279万 911
中央値(0円世帯を含めず) 650万 見つけられず
中央値(0円世帯含む。筆者推測) 500万? 400万?

私個人の考えとして2019年時点での40代後半は氷河期世代に当たらないと考えているので、40代前半に絞るとかなり下がると思います。 30代以下の若年層でも残高が少ないので就職氷河期以降の雇用体系の変更の影響は大きいのではないかと思います。

資産形成

いわゆる普通の勤め人限定で考えています。 実際に行うには、次のような順で条件を満たす必要があるかと思います。

  1. 健康
  2. 収入
  3. 生活防衛資金の確保
  4. 余剰資産(余資)で資産運用

出口、何のためにお金が必要かも考えておきます。下に行くほど難しいかと思います。

  1. 生活の足し
  2. 老後資金
  3. セミリタイア
  4. リタイア・FIRE

健康:意外と当たり前ではない

健康を害するほど長い時間働かされた挙句、収入も不充分で体・精神を壊した人も多いですよね。 憲法に書かれている「健康で文化的な生活」とやらは保障されているのか問いたくなります。

私にも経験がありますが、最終的には喧嘩して逃げました(笑)。 続けていても非合理的な搾取しか思い浮かばないので、恐らく正解だったのだと思います。

不調から一線を超えて壊れると危険で回復に長い時間がかかります。 最悪、回復しないということもありえます。 今も苦しんでおられる方々が安心して過ごせる日が迎えられることを祈り続けています。

中年になりましたので加齢による体力の減衰も見過ごさないようにしましょう。

まずは健康を確保。

収入:何とかしてホワイトな職場をゲット

親世代と同程度の額を安定して稼いでいる方が少数派でしょう、寧ろ取られるものも増えている状態。 一か所で働き続けられる人はどの程度いるんですかね?

社会に出るときの就職の難易度が高く超買い手市場の時代、雇用体系をいじり回され混乱したのが我々の世代です。 「新卒一括採用で年功序列から能力主義で成果報酬」などへとも言われましたが、実際にあったのは「安くこき使うか」だけでだったと思います。

「能力」「評価」「報酬」は独立事象で、いきなりルールを変えて公正な運用ができると考えたこと自体そもそも間違いでした。 他方で、一部が過剰に保護されるような仕組みもあるので勝ち組・負け組」「上級国民」「親ガチャ」なんて言葉が流行るのも仕方がないと思います。

会社が一生の面倒を見てくれるわけでもないので、所定の時間を売ったら魂まで売る必要はありません。 資産運用するにも時間(プライベート)が必要となります。 健康に過ごすのに充分な給与だけでなく時間・プライベートも確保できるホワイトな環境にお勤めなら次のステップに進めます。

副業

自分には無理でした。 投資を副業とすることもありますが、貯金をしている感覚に近く個人的には副業と言えない気もします。

本業というか仕事が忙しく副業用の時間を確保するのが難しいなと思います。 ブログを収益化できないかと思いましたが諦めました。

会社も弱くなった

コストカットしか評価しない・されない時代が続き、新しいものを生み出せなければ儲からなくなるのは当たり前です。 実際には必要な物まで売り払っているように思えますが……。 指摘する人が少ないのですが、無策に短期雇用が増やしますと組織内のノウハウの保護や開発能力も低下しますので競争力が無くなるのも当たり前です。 国際的な賃金低下を今更嘆いても仕方がないと思います。

生活防衛資金の確保

艱難辛苦を経て、収入と時間を確保できたら、次は貯金を考えましょう。

最初に、生活防衛資金を貯めます。 これは、収入が途絶えるような有事に備えて用意するお金です。 必要額は人によって異なりますので個々に決めます。 投資に使いません。

次に、生活防衛資金額を超えた貯金を余剰資産と呼び、こちらを投資に使います。

お給料というのは素晴らしいですね。 計画的にお金がもらえます。

  1. 収入の把握
  2. 支出の把握
  3. 無駄遣いを見直して節約、貯金可能額を増やす
  4. 貯金をし、生活防衛資金を確保
  5. 更に貯金をし、投資用資金を確保

収入は給与明細をみれば分かりますが、支出は通帳を1年分をみて月ごとの傾向をつかむと良いと思います。

資産形成という観点からすれば、究極的には健康を保つ程度に生きられる最低限度のお金以外は無駄遣いと言えるかもしれません。 ただ完全になくそうとすると、思わぬ弊害が出ます。 最も悩むのはココかもしれません。

節約術

節約法に関するサイトが随分増えました。 ストレスが少なく節約できる上手な方法が紹介されていたり、コストが推測できたりするので参考になります。 私もケチだと言われてますが、及ばないと思うこともあります。

個人の経験になりますが、食費の削減には注意が必要です。 安易に行うと、摂取する栄養素が炭水化物と脂質に偏り、タンパク質及びビタミンなどは減りがちです。 また当時は害するつもりはなくとも後年に祟り、結果的に医療費を増やすことになります。

体が資本であり健康が最も大切であることは、常に忘れないようにしましょう。

何か月分必要か?

月の支出から計算してよく言われるのは、3ケ月~2年、最長は5年でしょうか。 5年分の生活費を超えた分を投資しても問題になることは余り無さそうです。 個人的には資産運用が軌道に乗ってきたら月数を増やすというのもありだと思う。

日本はデフレが続いて忘れがちですが、現金はインフレに弱いことは頭の片隅に残す必要があります。 年に一度は1年間の支出を元に見直して増額(減額)をするべきです。

余剰資産で資産運用

(少ない?)給料から身を削る思いをして余資を出す体制が出来ました。 ざっと考えるだけでも以下のようなものが浮かびます。 多少の前後はありますが、下にあるものの方がリスクが高いかと思います。

  1. 預貯金
  2. 投資信託
  3. ETF
  4. 不動産
  5. 仮想通貨
  6. FX
  7. その他

特段の専門知識もなく時間が無い場合は、貯金の次の段階として「敗者のゲーム」に書かれているようなインデックス・ファンドの積み立てが無難しょう。 これも、詳しい説明のサイトが山のようにあるので説明は省略。 資産運用の標準 として考えて良いかと思う。 一発逆転とかできる手法ではないです。

ETF も候補にあげられますが、まずは汎用的な投資信託で考えましょう。

税制:NISA と iDeco

課税の話ですが、詳しい説明はネットに沢山あるので結論と軽く批評だけしておきます。

  • 積み立てNISA:最初はこれで。40 ではなく 積み立てしやすい12の倍数か52を採用するべきでは?
  • NISA:もうすぐ終わり。2024 年から始まる新NISA(2階建て)はややこしい。
  • iDeco:何度か検討したのだが使い難い。前時代的に仕事が安定している人のための制度で差別的では?

似たような制度が乱立しているので、シンプルな NISA を枠を拡大して無期限にした方がよっぽど分かり易い。 現行法のロールオーバーなら購入枠が5年600万固定でも10年でなく本人が死ぬまでなどにしてもらえれば、かなり使い勝手が良く年金問題に対応しやすいと思う。 事務処理も減るかと思うんだけど。

最初はどのファンドを買うべき? S&P500 or 日経平均

最近は専ら S&P500 を基準に勧める話が多いですね、20 年前は日経平均だった気がする。 若い時分には「俺のような優秀な若者を雇わない日本企業に未来はないだろう」などと痛いことを考え日経平均 だけは買わなかったのですが、 ここ10年の結果、日経平均が約200% に対し S&P500 (円換算)が約400%なのであながち間違いといえない。

具体的な銘柄に関しては、「投資信託 インデックス お勧め」とか適当に検索すれば色々なサイトが引っかかると思う。 初めての人向けには eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) か幅を広げるなら オルカン、バランス 辺りになるかと思う。

リスク許容度と Buy and Hold 戦略

買っただけで売らずに持ち続けるシンプルな戦略で、調子が悪いときでも退場しない胆力が必要となる。 実際には価格が下がった時ほど、苦痛から逃れるために手放したくなる衝動に駆られます。 リスク許容度は個人の資質などに影響するので、実際にやってみないと分からない。

市場がランダムウォークすることを少額から体験しておいた方が良いと思う。 また始める時期が悪ければ、成果を感じるのに10年ぐらい掛るかもしれない。 これも運次第。

ファンドと現金のバランス

若いほどリスクは取れるが、人生の半分近くは過ぎました。 教科書的には低リスク資産として債券を紹介されますが、デフレが長く続き殆ど儲かりませんし使い易さから現金にして運用したケースが多いかと思う。

やはりインフレは頭の片隅に入れて置きましょう。

収入が無くなった
  1. 生活防衛資金を取り崩す
  2. 生活防衛資金が尽きたら、投資信託を換金。しかし、こういう時は価格も低い。
  3. 再び収入ができたら、まずは生活防衛資金の回復
  4. 余資ができたら積み立て・資産運用再開となる。

当たり前すぎる話だが、安定した生活が資産形成の最も重要な原動力になる。

FIRE ?

かなりの元手ないと難しい。 積み立てインデックス投資では長期に好況と不況を通じた利回りを最低3%に設定して考えることが多いと思います。 20年投資を続けると含み益は30%強が期待値かと思います。 ただ機械的に20年も積み立てができる例は稀だと思う。 冒頭にも書きましたが、ここ数年は例外です。

2022年現在、日本で大人一人が慎ましく生活してFIREしようとすると、評価額 5000万がギリギリのラインという考えが多いようです。 私の感覚とも一致します。 セミリタイアを検討することはできるかと思います。

バックテストではなく理論値になりますが、5000万円の投資信託を持つには概算で20年間月13万円積み立てる必要があるかと思います。 高給取りで20年慎ましく生活していれば、FIRE できたかもしれません。

贅沢しない普通の生活では1億 円を超えてからという意見が多いです。

NRI の金融資産ピラミッドだと、5000万円と1億円って準富裕層、富裕層世帯の入り口なんですけどね。

資産運用環境などを振り返り

1990年代後半から2000年代前半が超就職氷河期の形成期といえるかと思います。

2000年までに証券口座を持っている人は少なかったかと思います。 学生時代はテレホーダイでインターネットとか言っている世代ですし。

2005年前後ぐらいにネット証券が使いやすくなったような、諸手数料等も高かったです。 またメインは株取引でネットトレードという言葉がもてはやされ、トイレの個室こもってトレードするを多くのトイレーダを生み出しました。

2006年辺りから団塊の世代の大量退職が見据えられ始め求人が急速に回復し、やはり不景気ではなく人員が理由だったのかと呆れた記憶がある。 しかし望ましい経験がないとほぼ評価されず実際には素直であろう新卒が歓迎された、転職をするにしても研修費用の返金請求事件というトンでも会社が発生したりと相変わらず散々だったと思う。

リーマンショック

S&P500 の 2007~2013年のチャート。リーマンショック前夜から回復までの期間
S&P500 の 2007~2013年のチャート。リーマンショック前夜から回復までの期間*2

少し雇用が落ち着いた雰囲気が出てきたと時にリーマンショックが起きます。 既に10年以上経過し、米国市場がほぼ一方的に上がっているので忘れている人も多いかと思う。 2007年の高値に対して、2009年まで約1年かけ半値になっている。 値を戻すのに3年以上の時間が掛かっている、この間を合わせると5年と言えるかと思う。 生活防衛資金を5年分というのはと、リーマンショッククラスなら耐えきれるというのが一つの根拠かもしれない。

東日本大震災

日経平均 2007~2013年のチャート
日経平均 2007~2013年のチャート*3

同じ期間に日本で起きたことを思い出してみます。 リーマンショック後、民主党への政権交代、市場停滞、東日本大震災自民党へ再び政権が戻りアベノミクスでようやく回復することが分かる。 政治が迷走していたというのは否定できないと思う。

個々の政党へのコメントは控えるが、氷河期世代を棄民としているという評価は共通している。

リーマンショック後は派遣切りがあったと記憶している。

コロナ

日経平均 2018~2021年のチャート
日経平均 2018~2021年のチャート*4

こちらは記憶に新しいコロナショックを挟んだ日経平均。70%程度まで下落したのは見て取れると思う。

2019年に兵庫県宝塚市の市役所の職員採用が皮きりだったと思うが、氷河期世代救済策と呼べそうなものが行われた。 確か3人の募集に対して、1816人が応募し、4人が採用、実質倍率454倍。 相変わらず就職難だと揶揄されたが、個人的には良い例ができた評価している。 その後、ポツポツとこういった事例は増えているようだ。

コロナ流行前に、政府が就職氷河期をようやく認め支援策を発表するが予算がかなり少なく桁が2つか3つ足らないとか20年遅いとか、馬鹿にしていると散々に言われる。

2020年 コロナが本格的に広がり、飲食・旅行業界が打撃を受けるのだが、政府の救済(GoTo)が早く額が大きかったため氷河期世代からは必要性が理解できなくはないが違和感があるという評価が多かったと記憶している。

安心して生活するのも難しい人が結構な人数いると思われる。

答え合わせ

  1. 健康 ← 働いて心と体が壊れなかった?
  2. 収入 ← プライベートのある健康的な生活を送れる?
  3. 生活防衛資金を確保 ← 無理のない範囲の節約で可処分所得を確保できる?
  4. 余剰資産で資産運用 ← 長期で安定した仕事ができる?

やはり世帯当たり金融資産中央値が推測400万で一人当たり月平均2万円弱の貯金という試算が正しいのでしょうか? 各段階で障害をすぐに思いあたるのが恐ろしい。

就職氷河期以降の中央値を考えると、資産形成が格段に難しいというのも納得できます。 安定した生活が送ることができて資産運用ができるのなら運が良い方なのかもしれません。

中央値で老後2000万円問題

一人当たりで換算して現在40歳・金融資産200万で70歳・退職金無しで引退すると仮定すると月5万円の貯金が必要な計算になります。 貯金200万を生活防衛資金に、今後の貯金を余資にインデックス投資の期待値でも月3.5万です。 やはりベーシックインカムが必要なのではと考えてしまう。

実際の受給開始年齢、額、物価などは分かりませんが、不公平過ぎないかと言われても仕方がないような。 無理のし過ぎで長生きできないかもと思う時もありますが。

インデックス積み立て投資は他人に勧められるか?

紹介はしたことはありますが、勧めていないといったところ。 高学歴ほど投資に積極的というデータもあったのだけど、実際には数はそれほど多くなく心理的なハードルが高いのだと思う。 投資は自己責任なのですが、損したときに心情的に恨まれるのは良くある話ですしね。 一つの方法と知っておくべきかと思う。

私の資産は公開しませんが、少なくなくも特に多くもないと言ったことろで利益率は30~40%をウロウロしています。 メインの証券会社は9年前に乗り換えて、NISA ロールオーバーで圧縮しての値なので市場がかなり良かったのでしょう。 資産運用が必須の社会になってしまったのかと思うことがありますが、それも奇異に感じずにはいられません。

ただ仕事を頑張るよりも収入が増えると思ったのは一度や二度ではないので、 冒頭でみたアンケート結果の自己研鑽して技能習得するより、投資をしていた方が良いと考えるのは分からなくもない。

高齢化問題の一つでもあるのだが世代間の資産移行がスムーズに進んではいないことは分かっている。 これでは格差と硬直化のスパイラルが酷く、新しいものが生みだせない状態になって久しい。

無理ゲーをこなし続けて息苦しさを感じずにはいられません。

参考サイト

ここで書かれている手法自体は目新しいものはなく、先達が詳しいものを用意してくれています。 私は氷河期世代にあてはめると実際どうかと考えたかっただけなので。

私は捻くれていますので、真面目というか温厚な氷河期世代も紹介 hyougaki.xyz

インデックス投資に関して知りたいときにまず見るべきページ randomwalker.blog19.fc2.com